忘れられない恋って不意に思い出す、振られてから1年も経つのに今だに涙が出てきて歩けなくなる。まるでさっき失恋したような、そんな気分にさせる。
学校の帰り道、一人で帰ると決まってこうなる。
人が大勢行き交うこんな場所で座りこんでるのに誰も見ないし声もかからない。
私が泣いてるから?泣き虫なのは昔からで、こんな私が嫌になったアイツ。
友達に取られるなんて最悪だよ。惨めな自分が嫌になって、いつかきっと誰かを同じように泣かせてやりたいって思う、そんな自分がいた。
涙で滲んだ視線の先に立ち止まってる人が見えた。
私が顔を上げると歩き出した。だれ?知らない人だ・・もしかしてずっと見られた?
「香里?どうしたの?」
友達の愛が下駄箱から上履きを出しながら私を気にする。
私は下駄箱を開けたまま身動きとれずにいたからだ。目線より少し高い位置にある私の下駄箱の四角い入り口から上履きの上にそっと手紙が置いてあった。どこから見ても女が買うような封筒で・・中を開けなくてもそれが誰からで内容が何なのか解った。
それに触れたくなくて、ただ封筒の向こうの上履きを眺めていた。愛は足をつま先に詰め込むようにトントンと鳴らして履くと私の箱を覗きこんだ。そしてあっさりとそれを外に出した。
愛の手の中で揺れる封筒は私を追い詰める。
「何?ラブレター?」
冷やかすように私を下から見上げる愛。
「違うよ・たぶん藤田さんから・・」
私はようやく取り出せた上履きを吐くと下駄箱を閉めて歩き出した。
「藤田?藤田って一年の頃に香里の男取ったやつじゃん?何で手紙来るの?」
愛は不思議そうに封筒を眺めていた。
私から彼氏を取った日から藤田さんは私と話がしたいと何度も教室に来たり、電話してきたりしてる。手紙も、何通目かな?いったい何を話すつもり?真面目って言うよりただの嫌がらせに近いよね。
「話がしたいんじゃない?」
私は自分の教室の前で立ち止まり愛にそう言った。
愛は「話?してもいーじゃん?」
手紙を私の手に押し込むと自分のクラスに入っていった。別に・・意地んなってるワケじゃない。今さら話す事なんてないじゃん。手紙を握り潰すと制服のポケットに無造作に入れた。私には彼氏だっているし、元彼の彼女と何てごめんだよ。だけど、会わない理由はやっぱり忘れられてないからなのかもしれない。そんな理由を認めたくない。手紙をもらった日は異常に凹む。
「明日休みだしゲーセン行くっしょ?」
そんな私を見て慰めてくれてるのか愛は遊びに誘ってくれる。
忘れる事ができるのは一瞬だけど、何もしないとその一瞬でも頭から手紙が離れてくれないのが現実。明日になればきっと元気になれるのに今日はとても一人じゃ駄目みたい。学校帰りにいつものセームセンターに行き新機種のプリクラで騒ぐ。
何も変わらないけど、変えたくないものは変わらないままでいいと思う。
印刷待ちで私の携帯が鳴った・・親からだったので、外に出て愛といる事を話して電話を切る。
センター内はプリクラコーナーとゲームコーナー・カラオケコーナーとイロイロあって
一番奥にあるのがビリヤードコーナー。
そこから団体客がぞろぞろ出て来た。それを避けるように壁にぎっと体を押し付けて行き過ぎるのを待った。その中に見覚えてのある顔がいた。
彼は携帯で話をしていたけど、こっちを見ている、だけど特に反応はなかった。
私の気のせいかな?だけど、胸が騒ぐ。何の動揺だろう?彼が通り過ぎた後には香水のいい香りがした。その場で少しその香りに酔っていた。
匂いが消えると私は愛のいる所へ戻ろうとした。その時肩を誰から掴んだ、驚いて振り返ると彼がそこにいた。
「え?」
心臓が止まる勢いで血が上へ上へと上る錯覚が起きた。
「これあんたのじゃない?」
彼の手には私が携帯に付けていたストラップが乗っていた。慌てて携帯を見るとトップのアクセが取れているのが分かった。
「ありがとう・・」
彼の手からアクセを取る時に触れた指先がとても熱かった。
「キレイな指」
突然の彼の言葉に窒息死しそうになった。目線は彼の胸のシャツより上に上げる事はできなかったけど、彼が笑っているのが分かった。何も言えないまま彼は去ってしまった。
私の中で彼の残像が残る。
何だろう?どきどきしてるよ
「何してるの?」
心配して探しに来てくれた愛が顔を覗き込んできた。
「あれ?顔赤いよ?」
愛の言葉を無視するように私は慌てて聞いた
「ねぇ愛・今の制服どこの学校か知ってる?」
「何?イイ男でもいた?」
ぞろぞろと帰って行く彼らを覗くように見ていた。
「違うよ~ほら、うるさかった・・し」愛には本当の事を言えなかった。